At the end of the day . . . .

Non-Permanent Forum on Indigenous Issues in Japan

ラポロアイヌネイションのサケ捕獲権確認訴訟:請求棄却

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 NHKニュースでは、傍聴席が満席のように見える。直近の一連の報道の賜物かもしれないが、原告の支援者ばかりではなかったかもしれないし、どれだけの人がアイヌだったのか分からない。判決は、(たぶん原告も)ある程度予期されていた通りだろう。

 裁判長には原告の主張通りに確認しますという判決を出して欲しかった。そこからラポロの団体がどう進むのか、反アイヌ勢力がどう動くのか、政府や道の行政がどうサボタージュするのか・・・等々を見てみたい。そのような社会実験をする器量は、被告側にはないのだろう。もちろん、まだ控訴・上告と続くのだろうし、この訴訟は終わっていないけれど、勝負はほとんどついた感じだ。

 ただ、道新をはじめ、この訴訟を報じて来た新聞各紙は、上の道新記事の見出しもそうだが、「アイヌ民族」と書き続けて来た。訴状や原告弁護団長の著書をよく読むとよい。それには「アイヌ民族の権利」とは主張されていない。裁判長の「一定の範囲に限定したとしても」という言葉は、そこに関係している。「アイヌ民族」へのダメージコントロールの意味で書いておく。

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追加記事:
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アイヌ民族への日本文化人類学会の謝罪声明(2)

 4月1日の投稿に書き続けてきたが、編集画面の操作に未だ慣れていないため、新規投稿で続きを書くことにした。

 この度の日本文化人類学会の「謝罪声明」は、出し方も内容も拙かった。4月1日午前1時の北海道新聞の「スクープ」がその日の朝刊に出た後かどうかは不明だが、同学会は翌2日の早朝までに学会ホームページで以下のように釈明していた。

一部報道では、アイヌ関係団体のみなさまに向けて本学会が学会声名の説明会を去る3月末日に開いたことが報じられています。説明会の開催は事実ですが、学会の意図とは異なり、このたび発出予定の声明が、4学協会で目下協議中の案件に直接関わる内容であるかのように報じている報道機関もあります。そのため、近くメディア関係者向けに説明の場を設け、正確な情報伝達をさせていただく予定でおります。(下線は追加。)
www.jasca.org

上の貼り込みから繋がる日本文化人類学会のホームページではどの投稿を開いても、URLは同じである。上の引用は5日の夜までに削除されたようで、現在は存在していない。都合よく消されている。

 時系列的に「一部報道」の中に北海道新聞以外のどの報道機関が含まれていたのかは分からないし、それをわざわざ確認するのも時間の無駄だが、テレビ局のHTBHBCもニュースで1日に「遺骨問題」を強調してニュースにしていたようである。
日本文化人類学会が「過去の研究姿勢をあらためて真摯に反省」とアイヌ民族へ謝罪 - YouTube
日本文化人類学会 アイヌ民族の遺骨の取り扱いめぐり“謝罪の声明”発表へ 「他の学会や政府の動きにも波及してほしい」 - YouTube
 さらに、毎日新聞が翌2日の夕方(17:20)の時点でも「アイヌ民族に初の謝罪 日本文化人類学会、不適切な遺骨の取り扱いで」という遺骨問題に特化した記事を僅か266文字の「速報」として後追いで配信した。
mainichi.jp

 昨日(5日)の報道機関への「説明」では、「声明はアイヌの遺骨問題に直接関わるものではない」が、「遺骨問題は文化人類学が関わってきた重要な問題の一つであることは認識している」と真島一郎会長は述べたそうである。
www.youtube.com
そして会見後の日本文化人類学会のホームページには、次の文章が掲載されている。

日本文化人類学会は、4学協会(北海道アイヌ協会、日本人類学会、日本考古学協会、日本文化人類学会)が検討を重ねております「アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)」に寄せられたパブリックコメントを契機として、2022年より毎年次の研究大会で特別シンポジウムを開催したほか、年間数度のオンラインシンポジウムの開催や特別サイトの開設を通じ、学会全体で時間をかけて主体的な熟議を重ねてまいりました。その結果として、このたび「アイヌ民族研究に関する日本文化人類学会・学会声明」を発出する運びとなりましたので、ここにお報せ申し上げます。
本声明は、アイヌ民族の方々に対する文化人類学者の過去の研究姿勢を真摯に反省するとともに、学問のありうべき未来に向けた責任の意志表明をめざすものでございます。

 声明を読めば、たしかに「遺骨問題」だけではなくもっと幅広い問題がある。しかし、上の動画の中の「声明はアイヌの遺骨問題に直接関わるものではない」とか、上で引用した「このたび発出予定の声明が、4学協会で目下協議中の案件に直接関わる内容であるかのように」と強調する理由は何なのか。報道機関がそこだけを拡声器で話すがごとくに強調しているのはなぜなのか。

 今日(6日)の道新朝刊に関連記事が載っているが、金子記者は文化人類学会が1日に謝罪声明を発表したという書き方を改めていない!(1日にどこで発表されていたのだろう?誰も目にしていないようなのだが。)
 他方、昨日の記者会見の全容がどのようなものであったのか、会見を見ていないので分からないが、記者たちは、文化人類学会が謝罪しているこれまでの営為の具体的にどのような研究のどこが問題であったのかとか質問したのだろうか。

 道新や毎日、その他の「一部の報道」は、なぜ「遺骨問題」だけを強調しているのか、日本人類学会は、なぜこの時期にこの声明を出したのか、「一部の報道」が報じた「学会の意図」とは異なるという本当の意図とは何なのか。僅か1ページの学会声明文そのものとその背景をきちんと分析しなければならない。

(時間があるときに続く――多分)

アイヌ施策推進交付金

 北海道新聞web版に昨夜、紙面に今日、「アイヌ交付金7億4300万円 24年度当初額、過去2番目に低く」という記事が出ている。
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 不思議なのは、この記事は北海道の中のさらにローカル版の記事なのだろうか。道東の方への交付決定額が含まれていない。なぜなのかな?

 令和6年度の予算総額は20億円で、繰越金を入れた執行可能額は22億1600万余。その中から4月1日交付決定額は18億7200万円余である。
 全道の交付決定額は、平取町が最多で約2億7千万円。以下、1億円を超える地方自治体が5つ(幕別町:約2億5千万円、釧路市:2億2千万円余、新ひだか町:約2億1千万円、弟子屈町:2億円ちょうど、白老町:1億7千万円余)で突出していて、最少額は上川町の8万円となっている。

「ポンペ物語」(朝日新聞道内版)

 朝日新聞の北海道内版で「ポンペ物語―アイヌ民族の戦後史」という連載が掲載されている。5回連載ということで、本日はその4回目である。
 連載が始まったとき、なぜ今この「物語」なのか、どういう連載になるのか?と不思議に思ったが、内容的には徐々に面白くなってきた。しかし、「アイヌ民族の戦後史」と副題がついているものの、3⃣と4⃣は「結城庄司物語」の感がしなくもない。
 あと1回でどう結ばれるのかに興味をもって楽しみに待とうと思うが、第4回左上の「先住権」の解説は、相変わらず不十分なだけでなく、上保晃平記者は、そこに書かれていることの意味合いと記事本文の用語との間に矛盾を感じていないのだろうか。それから、UNDRIPの採択を2008年としているのも、初歩的な間違いである。
 もう1つ、5段目の「国連演説から帰国した野村理事長を~」のくだりは、ポンペ氏を軸に書いているからそうなのかもしれないが、野村氏と部落解放同盟との接触はそれ以前からあったのではないだろうか?

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 連載最終回の5⃣を読んだ。結局のところ、マス(大衆)メディアの朝日で、しかも5回の連載で踏み込んだ「戦後史」が書けるはずもないという予想が的中して失望。

アイヌ民族への日本文化人類学会の謝罪

 1年前の今日、このブログを開き、1本だけ投稿を書いて、それを下書きに納め、世情に書く気を喪失させられて、その後何も書かずにちょうど1年が過ぎた。

 何年か前の4月1日に、当時の高橋はるみ北海道知事がアイヌ民族に謝罪を考えているとして、謝罪文がここはてなブログに投稿されたことがあった。もちろん、それはエイプリルフールだった。

 北海道新聞が他社と競ってのことか、珍しくこんな時間に第1報を出している。これはエイプリルフールではない。
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 一夜明けて紙面で確認すると、1面の見出しは「謝罪へ」である。記者(および編集部)は、声明文を詳細に検討して書いたわけではなく、「珍しくこんな時間に」(午前1:00)と書いたように、ただ他社に先駆けての一番乗り、「スクープ」狙いの感じが強い。
 記事は1面で「アイヌ民族遺骨の不適切な取り扱い」に力点を置いているが、社会面(29ページ)の記事本文でも「謝罪」を遺骨問題に絡めている。文化人類学会(もしくはその関係者)が、この記事の遺骨に関する内容について事実誤認と抗議してもおかしくはないだろう。

 私たち読者が知りたいのは、「文化」人類学会が何に対して謝罪するのか、具体的には同学会員の「研究」のどういうところが「『極めて不十分であった』」のかである。「不十分」なだけであったのか、「不適切にもほどがある」というような研究は無かったのか。(因みに、4段目のこの段落の「意志」は「意思」でなくてよいのだろうか?)
 たぶん北海道新聞は、後日この件について特集を組むでろう――と誘導しておこう。

 それとは別に、この際、北海道新聞をはじめ、メディア各社は「過去の[報道]姿勢を改めて総括する必要」を感じていないのだろうか。

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 40分ほど前(19:50)に続報が出ているが、この時間だと、この記事は紙面には載らないのか?載るとすれば、明日の朝刊だろうか。今は、これだけしか分からない。
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 日本文化人類学会は、「報道機関などに声明文を郵送」!声明文を送っただけ?? 会長がどこかで記者会見して謝罪したのではないの?
 「現時点で取材に応じておらず」ということは、元の記事は結局(at the end of the day)、リークに基いて書かれただけだったのか。
 「近く報道関係者向けに説明の場を設ける方針」ということも、なんだかふざけた感じだ。30日と31日に一部のアイヌに説明したそうではあるが、大多数のアイヌを蔑ろにしているのでは?
 詰まるところ、文化人類学会は、ホームページで公表し、一部のアイヌ関係者に事前説明をし、「報道機関など」に郵送しただけなのね。

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 今5日の23:59。今日の終わりに、詰まるところの話を書こうと思ったけれど、もう0時を回ってしまった。
 学会の声明は、5日の夕刻にホームページに掲載された。それまで紆余曲折があったようだ。「学会声明」の内容は、月末に配布されたものと同じようである。北海道新聞web版が23:15と23:41に配信している。
 考古学会と自然人類学、特に後者がどう出るのかということもあるだろうけど、この謝罪文そのものも批判的検討から免れることはできないだろう。
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